ウィメンズクリニック神野

ウィメンズクリニック神野の最新ニュース

(1)抗糖化機能性食品のヒシエキスは、体外受精や顕微授精が反復不成功の患者さんに対し、妊娠率を著しく改善しました。

 この臨床研究の成果は、平成27年5月22日の第8回糖化ストレス研究会と平成27年11月26日の第33回日本受精着床学会で発表いたしました。以下に受精着床学会発表の抜粋を記載いたします。

抗糖化機能性食品 ヒシエキスによるART妊娠率の著しい改善:ART反復不成功の高齢不妊に対する終末糖化産物低下の重要性。

目的:近年の不妊増加は、晩婚からの加齢と不良な生活習慣からの不健康が主たる原因と考える。加齢と糖尿病の主病因である終末糖化産物(AGE)の蓄積は、我々の既報の如く、卵巣機能障害にも大いに関与し、AGEの減少はその新しい治療法となると示唆された。そこで今回、強いAGEの形成抑制と分解作用を併せ持つヒシ抽出エキスを、ART反復不成功の高齢不妊に投与し、ART治療成績の改善を得たので報告する。

方法: ART反復不成功の高齢難治性不妊症32例(平均42.2歳、84%が40歳以上)に対し、倫理委員会承認および説明と同意のもと、ヒシ抽出エキス 100 mgを連日1~2ヶ月内服後、ARTを施行した。投与開始前および1~2ヶ月後に諸種AGEを測定し、エキスのAGE低下効果も評価した。

結果:胚発育は、以前のARTに比し、24例 (75%) で改善し、5例 (16%) で不変、3例 (9%)で不良だった。その結果、7例が臨床妊娠(22%)、6例が継続妊娠(19%)となった。血中toxic AGE (TAGE)は、投与前9.0 ± 0.7 (SEM) IU/mLから、投与後7.1 ± 0.7 へと、有意に (p<0.05, paired t-test, n=5) 低下した。CMLは、低下傾向があるも、有意ではなかった(1.3 ± 0.2 μg/mLから1.0 ± 0.2へ; p = 0.30, n = 15, paired t-test)。しかし投与前のCML値が高い(>1.0μg/mL)か低い(≤1.0)かで2群に分けると、高CML群 (7例)ではCMLは2.0 ± 0.2から1.1 ± 0.3へ有意に低下し(p<0.01)、低CML群(8例)では0.6 ± 0.05から1.0 ± 0.2へ増加傾向を示した(p = 0.09)。そして臨床妊娠率は、高CML群で43% (3/7例)、低CML群で0% (0/8例)と、高CML群でより高い傾向が示された(p = 0.08, Fisher直接検定)。

結論:ヒシエキス投与はAGE低下によりART治療成績を著しく改善すると示唆された。今回の対象例は、ART反復不成功の難治例で、平均年齢42.2歳である。2012年日産婦集計の42歳に対するART生産妊娠率は3.6%であり、ヒシエキス投与の妊娠率19%は、著しく良好と考える。ヒシエキスはAGEを低下し、かつAGEが高い症例でより有効と示唆され、妊娠率改善の機序はAGE低下作用と推察された。AGE低下は、不妊治療と予防の新しい領域を開くと期待される。

(2)新しい顕微授精装置を開発し、胚発育が著しく改善しました

 この臨床研究の成果は、平成27年4月12日の第67回日本産科婦人科学会のミニワークショップ、平成27年4月26日のIFFS/JSRM International Meeting 2015、および平成27年11月27日の日本受精着床学会のランチョンセミナーで発表いたしました。以下に受精着床学会発表の抜粋を記載いたします。

新しいICSI装置 (Venus, Vortex-like-movement- Evoked Nicking Upon Stick-site) は卵細胞質膜穿刺を容易化し、胚発育を向上する。

目的:ICSIでスムーズな卵膜穿刺と精子注入は、妊娠達成に必須である。しかし卵膜はときに丈夫で何回も刺すことがある。また吸引法で膜を破ると、ピペットに卵膜がつまり、精子注入で多くの液が入ることもある。そこで我々は、よりスムーズで確実な卵膜穿刺を可能とする新しいICSI装置 (Venus, Vortex-like-movement-Evoked Nicking Upon Stick-site) を発明し、施設倫理委員会承認とUMIN-CTR登録(UMIN000014600)のうえ、説明と同意のもと、有効性を検討した。

方法: Venusは、穿刺ピペットをきりのように捻じ込む装置である。

予備研究:重症男性不妊3例のARTで、卵56個を無作為に次の3群に分けてICSIを施行した。従来 (C) 群:捩じり運動なしで穿刺する。直接Venus (DV) 群:捩じりを加えて一回で穿刺を試みる。側壁Venus (SV) 群:まず第一穿刺で卵膜をトンネル状に伸ばし、その側壁を捩じりながら再度穿刺する。これらの3群で穿刺回数、生存率、胚発育率を比較した。

本研究(途中解析):予備研究でDVは卵への侵襲性が高いと示されたため、本研究は卵をCとSVの2群にのみ無作為に分けて比較することとした。今回途中解析として、ART13例、卵140個の成績を分析した。

成績:予備研究:C群(卵18個), SV群(16個), DV群(17個)で、穿刺回数は3.4±0.5(SEM), 2.5±0.3, 1.4±0.3と順次有意に減少したが、卵生存率は100, 94, 47%とDV群で有意に不良で、生存卵の良好胞胚形成率は11, 20, 0%とSV群で高い傾向を認めた。本研究:C群(卵66個), SV群(74個)で、卵生存率は96, 95%、胞胚形成率は39, 57%とSV群で有意に高かった(P<0.05)。胞胚形成の成否に対する穿刺方法(C vs. SV)と穿刺回数の相関をlogistic回帰分析すると、穿刺方法が有意に相関し、SVで2.0倍多く胞胚に発育した(95% C.I.: 1.03~3.97)。これまでに21症例にSVのみでICSIを施行し、妊娠率33%を得た。

結論:Venusは、穿刺ピペットをきりのように捩じることで、よりスムーズでより確実な卵膜穿刺を可能とすることができた。その結果、卵へのストレスが軽減し、胚発育が向上した。

ヒシエキスを利用した患者さんからのお手紙を了承を得て掲載させていただいています。