こんなに手を伸ばしても……とどかないモノがあるなんて――――――――


























































冬の夜。


天気は曇り。


エドワードは旧タッカー宅の近くのベンチで一人座っていた。


「…さむ……」


コートも着ないで部屋を飛び出してきたエドワードは寒そうに腕をさする。


今にも降り出しそうな空。













そう、あの日もこんな空をしていた……。
































あの日、オレは助けられなかった。























ニーナを助けられなかった。























オレはもうれっきとした大人なんだと思っていたけど























あの時改めて自分の無力さに気付かされた。























変わり果てたニーナの姿。























オレを嘲笑うタッカーの声。























まだ頭から離れない、楽しそうに笑うニーナの笑顔。















































“ あそぼう      あそぼうよ  あそぼうよ ”













































“ それも君が言う人の命をもてあそんだ結果だろう!? 同じだよ君も私も!! ”






































――――――ちがう!」

























勢いよく出された言葉は白くなりやがて消えた。

















「ちがう…!オレはこんな事……オレは――――――!」






















そのとき、背中にふわっと温もりを感じた。


エドワードが後ろを向くと、其処にはロイが自分にコートをかけていた。


「こんな所にいたのか」


息切れしながら言うロイを見て、エドワードはロイが懸命に自分を探してくれたのだと悟った。少し恥ずかしくなり、下を向く。


「…何しに来たんだよ」


ロイははあ、と溜息をつき、エドワードの隣に座った。


「アルフォンス君に頼まれてね。君がいなくなってしまったから一緒に探してくれ、と言われたんだ。それと……私も君の事が心配だったんだよ」


あまり見せないロイの笑顔。その笑顔に胸を締め付けられるのと同時に、皆に心配をかけてしまった自分を戒めたくなる。


「………」


「まだそんな事で悩んでいるのか。君達兄弟は元の身体に戻ると決めたのだろう?ならば、此処で立ち止まっているヒマがあるのか?」


「そんな事……だと?」


ロイは自分の気持ちを分かっているものだと思っていた。















知ってる。


立ち止まっちゃいけない事ぐらい知ってるのに。















「あんたは…大佐は友人や大切な人が死んでも……!これしきのことと言って何も思わないのかよ!?何も感じないのかよ!!?」


エドワードは我に帰ると、自分が立ち上がり、ロイに叫んでいた事に気付いた。


「あ……」


急に罪悪感に駆られ、謝ろうとする。


「ご、ごめ……」


「私は軍人だ。軍人はいつも“死”と背中合わせだ。それに今の時代はただでさえ戦争が多い。私の友人も殆どが軍人だった」


「え………?」


「そして友人達は戦争の場に向かった。もちろん私もだ。そこで友人達は殺され、死んでいった」


「……!」


「皆私の目の前で死んでいく。私はただ見ていることしか出来なかった。何も出来ないもどかしさに長い時間苦しんだ。だが軍人には使命がある。


立ち止まってはいけない。悩み苦しんでいるヒマなど無い。……それが軍人だ」


































流れ星が消える前に3回願いを唱えると願い事が叶う?


バカバカしい。


そんなことより、願いの実現のために努力してたほうがよっぽど有意義だと思うけど。

































「…軍人になったら……もう立ち止まっちゃいけない……のか?」




























たとえ嫌われようと、たとえ軍の狗と罵られようと、身体を取り戻すためならどうってことないと思った。


どんなことでも乗り越えられると思った。






























「……ああ」


ロイは少し躊躇いながら言った。


「嫌だよ……オレ、そんなの……嫌だよ
――――!」


エドワードの爪が自らの掌に深く食い込む。





本当はこんな子供を軍に入れるべきじゃなかったのだ。


ロイはエドワードの気持ちを察し、悔しそうに目を瞑る。


「ただ、そんな軍人にも許されていることが一つある」


「……?」


ロイはベンチから立ち上がり、立ったままのエドワードをふわりと抱きしめた。


「感情を表に出す……ということだ」


「………!」







































痛みや苦しみならまだ覚えてる。
































それを無理矢理引き剥がして

































それを無理矢理消し飛ばして























































前に進むよ。
















































































景色が滲む。
























頬が熱い。






















「うっ…ひっく………」










ロイは抱きしめる腕を強める。










「ごめっ…ふぇ……ニーナ……!」










エドワードはロイの裾を掴む。


涙と一緒に流れるのは、悲しみ、悔やみ、そしてやっと泣く事が出来たという安心感。










「ひっく…オレ……なんにもっ……なんにもできなかった――――――!」





























天から落ちてくる雨よ  どうかこの哀しいオレの涙を隠して。



















星さえ見えない暗い空よ  どうかこの哀しいオレの姿を隠して。





























「ひっく……ごめっ…ん――――――――!!」









































































雨はまだやまなかった。




























神サマ

























たとえ流れ星が消える前に3回願い事を唱えられても




























願いを叶えてはくれないのですね。






































































もはやロイエドではなくなっております。シリアスって難しい……Σ (゚Д゚ ;)
どこか気になるトコがあっても何もいわんといて下さい。